南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

改革路線が潰されて大規模リストラが始まる可能性も

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 三越伊勢丹HDの大西洋社長が電撃解任される直接的な働きかけは労働組合からだった。

これを見るにつけ、一連の大西改革は現場社員にとっては苦痛だったのだろうと察せられる。
日経新聞の記事によると、少ない人員に対して次々と新しい仕事を積み上げられて現場は疲弊していたとされているが、まあ、それはその通りだったのだろう。

2012年から始まった大西改革の眼目は、

1、新規ビジネスを作り出すこと
2、従業員の意識改革

にあった。その次の段階もあったのではないかと思われるが、もうそれが形になることはない。

まず、1についてだが、外食やブライダルなどとの合弁会社設立、エステや旅行会社のM&A(企業買収)などを実行した。

EC強化やファッションヘッドラインという自社ウェブメディアの立ち上げもあった。

個々の事例を見ると、その意図がよく分からないものもあるし、効果があったとは言い難いものもある。

三越伊勢丹HDの百貨店依存比率は92%に及ぶ。
文字通り、「百貨店のみの一本足打法」である。
その一方で、百貨店事業の利益率は1%強しかなく、Jフロントリテイリングや高島屋に比べて格段に低い。

きらびやかな伊勢丹新宿本店のイメージや大西改革による話題性であまり注目されてこなかったが、足元はすでに崩れ始めていたといえる。

経営者ならここで選択が迫られる。

1、大規模な解雇を含めたリストラを行う
2、大規模解雇を回避するならほかの成長エンジンを作る

である。

実際に6回ほどインタビューをした個人的感想をいえば、大西社長は百貨店が大好きだった。
Jフロントリテイリングのような「脱百貨店」を唱えるつもりは毛頭なかった。

そうなると、大好きな百貨店を守り、雇用を守ろうとすると「百貨店自体を成長させる」か「百貨店事業以外の新規事業を立ち上げ、ホールディングス全体の収益をかさ上げする」という方針にならざるを得ない。

そして、大西社長は後者を選んだ。

小島健輔さんが、「大規模なリストラを先延ばしして受け皿としての新規事業作りを行っていた」と指摘されるのは、言い方は別として、そういう側面も十分にあったと考えられる。

「百貨店自体を成長させる」という構想は不可能だったのだろうかという疑問を抱く人もいるかもしれないが、これはかなり難しいのではないかと思う。
それほど簡単にできるなら、とっくの昔にどこぞの百貨店が実践しているだろう。


状況から大西社長の思考をたどると、

百貨店を守るために新規事業で収益をかさ上げする

そのためには従業員の意識改革が必要だ

という結論が導き出されたのだろうと思う。

いくつかの百貨店で催事販売をしたり、取材した感想でいうと、百貨店の従業員や管理職者は保守的でスピード感がなくて、危機感のない人が多い。(全員がそうだとは言わない)

大西社長はその体質に危機感を持ったのだろう。

自身の過去の著書でも、昨年のインタビューでも盛んに「スピードが遅い」「危機感がなさすぎる」を連発されている。

他業種の成長企業のスピード感を取り入れることを最重要課題としていた。
それが従業員にとっては苦痛だったのだろうと想像できる。

百貨店業界の危機を煽られるのも苦痛だったのかもしれない。

それでも状況を眺めると、百貨店業界は危機に瀕しているといえる。
売上高が6兆円を割り込み、地方店の閉店や撤退、倒産、営業譲渡が相次いでいる。

だからこそ、スピードを上げて新規事業や百貨店改革を成し遂げたかったのだろう。
もう百貨店にはのんびりゆっくり改革している時間はない、という思いだったのだろう。

今回の電撃解任は労働組合と現場従業員によるものなので、後任社長は当然、現場に対する配慮を強いられ、大規模で急激な改革はできにくくなる。
なぜなら、また労働組合と現場によって電撃解任される恐れがあるからだ。

自然と、改革のスピードは遅くなるし、改革自体がなくなる可能性もある。

違法なブラック経営者に従業員がNOを突き付けることは当然の権利だし、そうすべきである。

しかし、今回の場合はそれに相当するのかどうか。
むしろ、従業員の収入源である会社そのものが業績低迷をすると、大規模解雇をせざるを得なくなる。
百貨店という旧態依然とした企業が、従来通りのやり方では生き残れないというのは衆目の一致するところである。

大西改革をつぶしたことで却って大規模解雇を招きかねず、従業員は自分たちを窮地に追い込んだのかもしれない。

仮に、今後、三越伊勢丹が従来路線に戻るとするなら、その業績は必ず今以上に低迷する。
そうなった際には問答無用の大規模解雇が始まるだろう。
その時に労働組合が「雇用を守れ」と言い出してもそれは、後の祭りでしかない。












三越伊勢丹の従業員は「変わらないこと」を選んだように見える

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 三越伊勢丹ホールディングスの今回の社長解任劇は、本当に興味深い。
大西社長を追い落としたのは誰だったのかというところに注目が集まっていたが、日経新聞の報道によるとそれは労働組合だったとのことである。

なんという強大な労組なのだろうか。

三越伊勢丹、大西改革に労組反旗 石塚会長が辞任迫る
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07I3B_X00C17A3EA2000/?dg=1&nf=1

百貨店最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の経営トップが代わる。7日、大西洋社長(61)が辞任し、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格すると発表した。大西氏は収益の柱を増やそうと、多くの新規事業を進めてきた。これに現場が反発して、労働組合が辞任を要求。経営から距離を置きつつあった石塚邦雄会長(67)が辞任を迫る異常事態だった。


とのことである。

記事自体は途中までしか読めないが、この報道を元にまとめられたこのブログでおおよその顛末はわかる。

[三越伊勢丹社長降ろしのドラマが深い] 三越伊勢丹HDの労組が大西改革に反旗。辞任というより降ろされたに等しい。次期社長の杉江氏は融和派だが、また百貨店一本足経営に戻るつもりなのか、今後どうするのか。
http://www.okatai.com/blog/2017/03/07/mitsukoshi-isetan-rouso-onishi-sugie/

新しい試みに現場社員の負荷は増え続けていたが、インバウンド(訪日外国人)や富裕層による消費が拡大している局面はよかった

その効果がはがれ落ちると「『新規事業で収益を上げろ』と厳命されても対応できない」(関係者)と、隠れていたひずみが表面化

本業の立て直しに追われている中、最終的には労働組合の関係者が石塚氏に泣きつき、改善を強く要求する事態となった

事態が動き出したのは4日午後

「現場がもうもたない。構造改革による混乱の責任をとりやめてもらいたい」
三越伊勢丹HD本社の一室で石塚氏は大西氏にこう切り出し辞表を差し出した
 
なんと労働組合関係者が会長に直訴。で、会長が大西氏に、辞めてくれという事態。完全に社長降ろしの現場。


とのことである。

当初は、三越派による巻き返しかと考えられていたが、労組と現場が反発していたということで、もちろん、それに同調した上層部もいたことだろう。

三越伊勢丹に限らず、複数の百貨店で催事販売をした経験からいうと、百貨店の社員は基本的に保守的で新たな試みを嫌う人が多いと感じる。

矢継ぎ早にさまざまな改革が行われれば、当然それに対する現場からの反発はあっただろうと推察される。
また、大西社長自身もそれを知っていたので、なかなか現場が変わらないという発言もあった。

大西支持者の社員もいたが、結局は少数派だったということだろう。

著書でも買いているように、大西社長はとにかくスピードを上げることを重視した。
個人的な経験で言っても、百貨店はなかなか物事が決まりにくい。

そういう多くの社員はスピード化に反発を覚えたのだろう。

それでも実際のところは、社員が反発するほどのスピード化でもなく、三越伊勢丹との合弁相手の会社に取材をしたこともあるが、やっぱり百貨店の意思決定は遅いという感想を相手が抱いていた。

一例でいえば、出張でもそちらは即決するが、三越伊勢丹はなかなかその稟議が通らない。

現場からするとスピード化を強制されて苦痛だったのかもしれないが、異業種と比べるとまだまだ遅いのが実情である。

各報道で指摘されているように、三越伊勢丹の業績悪化に対する大西社長の経営責任はある。
4年以上も社長に就いていたのだから、責任追及されることは仕方がないだろう。

それでも百貨店事業比率が高すぎ、その百貨店事業そのものが苦戦に転じた状況下で、多角化という方針は完全なる間違いとは言えないのではないかと個人的には思う。

逆に新社長に就任する杉江俊彦専務が、「本業回帰」というメッセージを発しておられるが、大丈夫だろうかと疑問を感じる。
大西社長も多角化とは言いながら、本質的には百貨店重視の姿勢であり、その結果が現在の業績悪化なのである。これ以上さらに百貨店を重視するという姿勢で効果が出るのだろうか。

また、今回の解任劇で三越伊勢丹のイメージは悪化した。
この悪イメージを逆転させるのは簡単なことではない。

単なる本業回帰だけではまったく効果がないだろう。

これから中期的には三越伊勢丹にかなり厳しい状況が続くだろうと見ているが、果たしてどうなることやら。







大西洋漂流76日間 (ハヤカワ文庫NF)
スティーヴン キャラハン
早川書房
1999-05






百貨店事業依存度が高く、百貨店事業収益率が低い三越伊勢丹

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 三越伊勢丹HDの大西洋社長退任が話題となったが、もっとも内情を詳細に分析して報道しているのは、この日経ビジネスオンラインの記事である。

三越伊勢丹の社長退任、頼みの「新宿」低迷響く
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/030600602/?i_cid=nbpnbo_tp&rt=nocnt

まず、前提として、辞任を申し出たのではなく、解任動議が決議される予定ということである。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長が月内に退任する見通しとなった。同社は7日に開く取締役会で「代表取締役の異動について決議する予定」と発表した。

とのことで、いわば反対派によるクー・デタとたとえることができるだろう。

この記事でも触れられているように、5月の決算発表に向けて新経営計画を策定中だったということで、自ら退任する意思は微塵もなかったと考えることができる。
なにせ、新経営計画策定中という話は、2月に耳にしているからだ。

また先週金曜日には自身が地方で講演されていたという情報もあり、退任の決議は寝耳に水だったのではないかと推測される。

それだけ、反対派は周到に根回しをしていたということであり、社内政治という点においては反対派が1枚も2枚も上だったということになる。

立ち上げて事業が始まったばかりの数々の合弁会社、数々の買収企業、そして、大西社長の肝煎りで行った中途採用の人員などは、どうなるのだろうか。
おそらく、反対派はこれらの事柄を継承しないと考えられる。

なぜなら、継承するつもりなら大西社長を失脚させる必要はないからだ。

退任後、会長にもならないということは文字通りの失脚である。

さて、この記事では三越伊勢丹の事業を数値で分析しているがなかなか秀逸である。
百貨店の盟主と目されている三越伊勢丹だが、その内実は崩壊の一歩手前という印象だ。

記事から引用抜粋してみよう。

高島屋、Jフロントリテイリング、三越伊勢丹の3社を比較している。

三越伊勢丹HDの2016年4月~12月期の売上高は約9300億円。このうち百貨店事業が約8500億円を占め、比率は約92%に達する。同じく第3四半期までの累計で、同比率が約65%のJフロント、同約87%の高島屋と比較しても、百貨店依存度が高いことが分かる。

一方、百貨店事業の利益率は三越伊勢丹HDが最も低い。百貨店事業で稼いだ利益を同売上高で割った百貨店利益率は1.04%しかなく、Jフロント(同2.43%)の半分以下で、高島屋(同1.22%)にも届かない。


現在「衣料品不況」などの逆風もあって、流通業界の中でも、百貨店の厳しさは際立つ。

三越伊勢丹HDは、百貨店事業に集中しながら、その事業の利益率が低いという、危機的な状況にあるのだ。2016年1月以降の株価を見ると、他の2社と比べて低迷が続いている。

とのことである。

株価云々は置いておいて、あれだけ華やかなイメージがある三越伊勢丹だが、事業の収益性という点においてはかなり厳しい状況に追い込まれている。

脱百貨店を掲げているJフロントは置いておくとしても、「ザ・百貨店」的なクラシカルなイメージの強い高島屋よりも百貨店依存度が高い。
そして百貨店利益率は高島屋よりも低い。

これは致命的で絶体絶命のピンチだといえる。

また新宿伊勢丹、銀座三越、日本橋三越の旗艦三店舗も苦戦している。

2016年4月~12月期で、伊勢丹新宿本店の売上高は、1979億6900万円と前年同期比2.8%の減少。三越日本橋本店は1261億6500万円で、2.2%減、三越銀座店は599億4300万円で6.9%減と苦戦した。

とあり、さらに

2014年3月期の新宿本店の売上高は、2654億円と前の期比で12.1%増となったが、翌2015年3月期は2585億円と2.6%減。

とも指摘されており、2016年3月期も減収が予想される。

「ファッションの伊勢丹新宿」にも陰りが出ており、2014年3月期の大幅増収は爆買いによる買い支えがあっただけで、日本人の需要は伸び悩んでいたと考えられるのではないか。

個人的な感想をいえば、伊勢丹新宿の売り上げ効率がいまだに高いことは大したものだが、いわゆる「最先端ファッション特化」路線は2014年3月期の2654億円が限界値ではないかと感じる。
その数値以上に、日本人に「最先端ファッション」の需要は無いし、潜在的需要もない。
「最先端の高価格ファッション」なんて誰もが求めるものではない。

銀座三越の爆買い向け改装は大失敗で、

初年度133億円の売り上げ目標に対し、売上高は44億円、営業損益は20億円の赤字となる見込みだ。

とのことで、爆買いブームは去り、中国人優遇に嫌気がさした日本人の富裕客層の上位3割も離れ、虻蜂取らずの見本のような事態になっている。

最後は

大西氏の退任の背景として、取締役など幹部の間で、かねて不協和音があったことを指摘する声は多い。業績悪化が鮮明になる中で、社内の摩擦は抑えきれないところまで来たのかもしれない。三越と伊勢丹が経営統合したのは2008年。約10年を経て、業界の盟主は岐路に立っている。

と締めくくられているが、業績が良ければ反対派は黙るが、業績が悪化して求心力が低下すれば、反対派は活動を活発化させる。三越伊勢丹に限らず、どの組織でも同じだ。

それにしても三越との統合から10年が経過して、盟主と目された伊勢丹自体も衰退の危機を迎えるようになるとは、まさにこの世は盛者必衰といえる。

評論や記事の中には、新社長が改革路線を継承することや、激しいリストラを期待する論調もあるが、それはあり得ないだろう。
なぜなら、改革路線に賛成なら、今の段階でわざわざ大西社長を失脚させる必要などないからだ。
もう少し成果が出始めるまで、上に戴いておくのがもっとも効率的で効果的だ。

まあ、そんなわけで今後、しばらく三越伊勢丹は混迷の度合いを深めることになるだろう。

三越伊勢丹の最新 儀式110番: こんなときどうする? 冠婚葬祭
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誠文堂新光社
2016-05-25



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株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
KADOKAWA
2017-02-24






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