南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

産地の自立化事業は自社ブランドを立ち上げることがゴールではない

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 製造加工業が下請け脱却を目指して、自社オリジナルブランドを立ち上げたり、小売店を立ち上げたりする事例が多く見られるようになり、それは企業存続のためには正しい方針だと考えられている。

もちろん、筆者もその考え方には賛成だが、それでもやっぱり自社オリジナルブランドを立ち上げて軌道に乗せるのは難しいと、改めて感じる。

先日、泉州の杉友ニットが破産申請をした。

杉友ニット(株)(大阪)/破産手続き開始決定
http://n-seikei.jp/2017/06/post-44479.html

ニット工場としてはそれほど知名度が高かったわけでもなく、売上高が大きかったわけでもないが、このニット工場はいち早く、自社オリジナルのニットブランドを展開していた。
「タップルーツ」というブランド名でだ。

このブログでも以前に採り上げたことがあった。

新事務所に移転してから1度お邪魔したが、その後、あまり行き来がなくなってしまい、ここ3年くらいは近況が聞けないでいたから、直近の状況がどうだったのかはわからない。

新事務所に移転した直後までは、自社製品を製造しつつ、工場としては他社ブランドの製品の製造を請け負っていたという二刀流の構えで活動していた。

「タップルーツ」も自社ブランドとはいうものの、卸売りが基本で、卸売り先の店舗の別注商品や他社ブランドの別注商品も積極的に受けていた。
また、ネット販売も楽天市場をメインに行っており、2002年ごろからネット販売を開始していた。
2002年というと今から15年前で、そのころに衣料品をインターネットで販売するなんてことは、業界の大多数が否定的に見ていた時期だ。

業界が猫も杓子も「ネット販売」と言い始めたのは2010年以降のことだから、先見の明はあったといえる。

しかし、それでも倒産してしまった。

自社オリジナル商品を開発しながら、他社の製造も請け負うというのは、いわゆる自立化のお手本みたいな取り組みであるし、2002年から楽天市場でとはいえ、ネット販売に着手するのも先見の明があった。

恐らく、今現在でも産地企業が、コンサルタントに相談するとこれと同じプランを提示するだろう。
違うのは楽天市場はあまり勧めないという部分だけだろう。

自立化のお手本みたいな取り組みを行っていても経営破綻に追い込まれてしまうということだ。

直近の状況がわからないから、数年前までの取り組みを思い返してみる。

上に書いたような取り組みは変わらず続けていた。
その取り組みから次の段階に進めなかった(進まなかった)というのがビジネス的に苦しくなったのではないかと想像している。

また、ブランド名、工場名の知名度があまり高まらなかった(高める取り組みが少なかった)ことも事業が好転しなかった原因の一つではないかとも思う。

自社ブランドを開発して卸売りしつつ、他社ブランドの別注商品も受ける。
また工場はこれまで通り他社ブランドの製造も請け負う。

こういう形態はこの15年間くらいである程度完成していたと考えられるが、そこから次の段階への移行ができなかったと断続的に見ていて感じる。

しかし、言うは易く行うは難しで、従業員数も少ない中では、次のことに取り組む(取り組ませる)のは容易ではない。どうしても目の前の日々の業務をこなさねばならないから必然的に従来通りのルーチンワークに比重の重きを置くようになる。

そのルーチンワークの中で少人数で新しいことにはなかなか取り組めない。

このルーチンワークに埋没してしまえば、それは製造業の自立化事業ではなく、単なる卸売り型ニットアパレルになってしまう。
小規模な卸売り型アパレルが苦戦しているのは業界全般に共通した話なので、その状況に巻き込まれてしまう。
出自が工場だとかは関係ない。

小規模な卸売り型アパレルが苦戦している状況に置かれてしまう。


それにしても、製造加工業者の自立化事業とはなんと難しいものか。
自社オリジナルブランドを開発してお終いではないのである。
開発したあとは、アパレルブランドとしての舵取りが求められ、その舵取りを間違ってしまえば、いかに模範的なモデルを作り上げようとも、経営は破綻してしまうのである。

繊維産地に向けて発信するコンサルタントの多くの主張を見聞きしていると、オリジナルブランドや直営店開設をまるでゴールかのように捉えているケースが多いと感じる。

なるほど、コンサルタントにとってはそれがゴールでその時点で報酬を受け取ってしまえば、お終いなのかもしれない。

しかし、事業者にとってはそこからが新たなるスタートであり、今度はアパレル企業、小売流通業としての企業活動が始まるわけで、その経営に失敗すると倒産に至ってしまう。

今回の杉友ニットの経営破綻は、改めてそのことを感じさせてくれる。

繊維産地の事業者も自立化を勧めるコンサルタントも改めて「そこがゴールではない」ということに思いを致すべきではないか。




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日本の工芸を元気にする!
中川 政七
東洋経済新報社
2017-02-24







売上高だけでなく店舗数も激減した百貨店 でも総営業時間は激増

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 百貨店全店の売上高合計が2016年はついに6兆円を割り込んで、5兆9780億円にまで低下したことは周知の事実で、それに対して対策が様々議論されているが、実もふたもない言い方をするなら、既存の個々の店舗が少しずつ売上高を伸ばした程度では、百貨店全体の売上高は回復しないのではないかと思っている。

なぜなら、百貨店の店舗数自体が減っているからだ。

不振百貨店の閉店が近年相次いでいるが、不振とはいえ、各店100億円前後の売上高がある。
不振百貨店が閉店するたびに百貨店全体では100億円ずつ売上高が減っているともいえる。

逆に残存した個々の店舗が売上高100億円を増やそうとすると並大抵の努力では実現できない。
相当にキツい作業になる。

日本百貨店協会の資料を見てみる。
これは2014年までの資料だが、売上高のピークは90年で9兆3000億円ある。
このときの店舗数は260店である。


キャプチャ






ちなみに日本百貨店協会によると2017年4月度は229店となっており、90年当時より約30店減っている。

百貨店の店舗数がもっとも多かったのは、99年で311店舗ある。
311店舗もあるのに売上高は9兆円を割り込んで8兆9900億円にまで低下している。
各店舗の売上高が如何に下がっていたかがわかる。

99年というとユニクロのフリースブーム(98年)の翌年でまだブームは継続しており、低価格化がキーワードになっていた。
翌年の2000年にそごうが経営破綻して民事再生法を申請している。

ピーク時から比べると今は百貨店店舗数が80店近くも減っているということになる。

これだけ店舗数が減れば、残存した個々の店舗が少々売上高を伸ばしたところで、かつてほどの売上高には回復できないことは、誰でもわかるだろう。
利益面は無視して、売上高だけを伸ばそうとすると新店舗をオープンさせることがもっとも手っ取り早い手法である。イオンリテールとイオンモールの手法はこれに近い。

店舗数がこれだけ減っているということはその逆で全体売上高は下がって当たり前ということになる。

現在、残存する百貨店は、今後、オンリーワン・ナンバーワン店舗しか残らないだろう。
どこか強い企業、強い店舗だけが生き残り残存者メリットを得るという未来図しか残されていないと個人的に見ている。

百貨店全部が今の規模で生き残るということはひどく楽観的なファンタジーだろう。

ついでに営業時間を見てみる。

売上高ピークの90年の総営業時間は2847時間だったのに対して、97年にはすでに3000時間を突破してそこから右肩上がりに総営業時間は増えていく。

ピークは2005年の3565時間で、その後、一旦3400時間台に下がるが、2014年は3553時間にまで増えており、ピーク時とほとんど変わらなくなっている。
そしてこの間、一貫して百貨店売上高は減り続けているのだから、百貨店が如何に効率の悪い販売方法を採っているかがわかるのではないか。

営業時間を増やしても売上高は回復せずに下がり続けている。
もちろん全体売上高が減っているのは店舗数が減っていることもあるが、営業時間を増やすことでは売上高低下に歯止めがかけられていないともいえる。

営業時間が長時間化するということは、百貨店の社員だけではなく、アパレル各社から派遣されている販売員も勤務時間が長時間化しているということであり、販管費が増える要因にもなっている。

普通に考えると営業時間が長くなればそれだけ販売員の人件費(人数を増やす、または労働時間を長くするから)は増えることになるが、それを抑える傾向が強いから、「衣料品販売員は拘束時間が長いわりに給与が良くない」といわれ、販売員が集まりにくくなっているといえる。

各メディアでは今更、「なぜ百貨店業界は衰退したのか」という犯人捜しをいまだにしているが、ここまで店舗数が減り、それに比例して総売上高が減ってしまっている状況で、犯人捜しをしたところで手遅れではないか。
先程も書いたように、百貨店全店が今の規模を維持して生き延び続けるというのは不可能としか思えないから、どこか特定の強い店舗、強い企業だけが生き残れる方策を探るべきだろう。

はてさて、最後まで生き延びられる百貨店はどこになるだろうか。



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そごう 壊れた百貨店―乱脈経営の全貌とメインバンクの過ち
『週刊ダイヤモンド』特別取材班
ダイヤモンド社
2001-04






ネット売上高の増加も実店舗売上高の減少をカバーできなかったユナイテッドアローズの5月度売上概況

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 ユナイテッドアローズの5月度売り上げ概況が公表されたが厳しい結果だったといえる。

全社売上高は対前期比4・2%減に終わった。
これだけなら「単に苦戦傾向だったのだな」という話だが、全社売上高の中に含まれているネット通販全店合計売上高は対前期比32・5%増と大幅に増えている。

ネット通販が32・5%も伸びているのに、全店売上高は4・2%減に終わっているということは実店舗売上高がどれだけ低かったのかということになる。

ちなみにアウトレット売上高も対前期比12・7%増となっているから、いかに正規実店舗の売上高が低かったかがわかる。

ネット通販が32・5%増、アウトレットが12・7%と伸びているにもかかわらず、全店売上高は4・2%減なのだから、2つのことが浮かび上がる。

1、正規実店舗の苦戦
2、ネット通販、アウトレットの売上高の小ささ

である。

また5月度は小売全店客数も対前期比3・2%減だから、相当に厳しかったといえる。

4月度も傾向は同じで、ネット通販合計が23・9%増にもかかわらず、全店売上高は1・3%減に終わっている。

ユナイテッドアローズの2017年3月期単体の決算では、ネット通販売上高は202億円、アウトレット売上高は170億円となっている。

このときもネット通販売上高は対前期比で39億円伸びているのに対して、小売(実店舗売上高)は3億1700万円縮小している。アウトレットは3億2900万円増えている。

アウトレットの増加を実店舗売上高の減少で相殺して、ネット通販だけが増えているということになる。


昨今、トレンドに流されやすいアパレル業界の経営方針は、「ネット通販強化」「ネット販売比率向上」を金科玉条のように振りかざして、全員で右へならえを繰り広げているが、これの実現は比較的容易である。

アパレル製品のネット通販売上高は各社とも元が低いので、売上高を伸ばすことは比較的たやすい。
例えば、1000万円の売上高を1500万円に伸ばすことは比較的たやすいが、500億円の売上高を600億円に伸ばすことはかなり難しい。

アパレルブランドの中でもっともネット通販売上高が大きいのがユニクロで、400億円超ある。
当たり前だが他のアパレルブランドのネット通販売上高はこれよりも小さい。

金額自体が小さいものを伸ばすのは比較的簡単だから、各ブランドのネット売上高はしばらくの間は伸び続けるのは当たり前の話である。

また、そうなると自然とネット通販比率は上がるし、ユナイテッドアローズに限らず実店舗売上高は下がるだろうから、ネット通販比率はさらに上昇することになる。

帳簿上の目標はすぐに達成できるだろうが、内実は各社・各ブランドともボロボロになってしまっているという事例は今後珍しいことではなくなるのではないかと思われる。

アメリカではすでに商業施設も含めた大閉店ラッシュが訪れているが、この要因の一つはネット通販の増加と反比例した実店舗売上高の激減だといわれている。

昨年前半ごろまでわが国で「オムニチャネルがー」と叫んでいたオムニチャネラーたちは、おそらくこういう事態を想定していなかったのではないかと勝手に推察している。

実店舗売上高は現状維持ないしは微減で、ネット売上高の大幅増加で、ブランド全体は微増ないし激増という未来図を「口だけオムニチャネラー」たちは思い描いていたのではないか?

しかし、いくら目新しい売り場・売り先が増えても、大衆の可処分所得が増えなければ、どこかほかの売り場での買い物を減らすだけのことである。
これは我が国だけのことではなく、アメリカ人も同じ傾向だったといえる。

ネット通販が増えた分、実店舗での買い物を減らしたというのがアメリカ社会の現在だし、ユナイテッドアローズの4月度・5月度売り上げ概況を見ているとそれと同じ状況であることがわかる。


今後、各社・各ブランドのネット通販売上高は増え続けるだろうが、それに反比例して実店舗売上高は減り続けるだろう。


アメリカと同じくらいの規模で起きるのかどうかはわからないが、商業施設も含めての大閉店ラッシュは近い将来起きると考えられる。
ワールドやイトキン、TSIなどの閉店ラッシュ、地方小型百貨店の閉店ラッシュを見ていると、もうすでに起こり始めているのではないかとも思う。


ネット通販売上高が増えてみんなハッピー.。゚+.(・∀・)゚+.゚


なんて、そんなおいしい話は日本にもアメリカにも存在していない。



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誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25




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