南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

現実を教えないファッション専門学校に存在意義はあるのか

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 そういえば、昨日、非常勤で時々講義をしに通っているファッション専門学校の卒業式があり、画像が流れてきた。

授業ではいつもお金の流れのことばかりを話していて、学生にとってはあまり面白くないだろうなあと思うのだが、一番重要なことなのでそれを変えるつもりはない。

そんな中、18年来のお付き合いのあるデザイナー氏とお会いしたのだが、以前は母校で特別講義をしたことがあるのだが、もう何年も前に行くのを辞めてしまったという。

その理由について、尋ねると、

「資金の回し方やお金の借り方、原価と利益の計算、手元に残ったお金はすべて収入にはならず、そこから次回の製造費を捻出しなくてはならないこと、なんかを話すとエライ先生からダメ出しをされたから」だという。

そのエライ先生いわくは

「学生がもっと夢を持てるような内容を話してほしい」

とのことで、

「実情を教えずに、何が専門学校なのか」と疑問を感じて特別講義に出向くことを辞めてしまった。


学生に対して、夢や希望を与えることは重要だろうが、夢や希望だけでは社会に出て生きてはいけない。
企業人としてサラリーマンを続けるならまだしも、もし仮に独立するのであれば、それこそ資金繰りのことは予備知識を持っておく必要がある。

独立して売上高が1億円のブランドだったとして、そのすべてが自分の収入になるわけではない。
そこから家賃、人件費、光熱水道代、製造原価などが差し引かれる。
それで手元に残るのは、半分以下になってしまうだろう。

手元に残ったお金がすべて自分の収入かというと、それもまた違っていて、その中から次シーズンの商品を製作するために出ていくお金がかなりある。

実際のところ、手元に残るのはごくわずかというのが、現状である。


中には、こんなわずかのお金で派手な生活をしているように見える著名ブランドもあるが、それは親や親族、配偶者などからの資金が流れ込んでいるから可能なのであって、自腹ではとっくに破産している。


自分でも、授業ではそういう話をできるだけしているが、学生たちは「普通に生活するには予想以上のお金が必要になることがわかって驚いた」と反応する。


しかし、それが現実だし、住む国を変えたところで内情は対して変わらない。
国によって多少の社会制度が変わるくらいだ。
中には「物々交換の時代に戻って」なんていう荒唐無稽なことを口走るイシキタカイ系の人もいるが、まあ、そんな生活がしたければどこか辺境の国で勝手にどうぞ、である。


それにしても、自分を振り返っても「お金の流れ」については大学を卒業するまであまり詳細には知らされていなかった。
ファッション専門学校に限らず、一般の高校や大学でもそういう話はしておくべきではないかなあと、今にして思う。

もしそうなら、自分ももう少し、若いうちから経済観念の発達した人間に育つことができたのではないかと、後悔することしきりである。







クルーグマン ミクロ経済学 第2版
ポール・クルーグマン
東洋経済新報社
2017-03-17




百貨店がニトリに助けられる時代

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 家具インテリアにはほとんど興味がなく、必要に迫られて国道沿いのニトリや家電量販店の家具売り場を物色して必要最小限の商品を買うくらいだ。

だから、大型家具はもう10年以上何も買っていないし、今後もよほど不具合が出ないと買い替える予定もない。
捨てるのにもお金が必要だし。

今、新しく買いたいのは扇風機で、15年くらい使ってきた扇風機がついに昨年夏に動かなくなってしまった。
別にダイソンの羽のない扇風機なんて欲しくなくて、オーソドックスな5000円くらいまでの扇風機が欲しい。
それをまた15年くらい使うつもりだ。(家具ではなく家電だが)

まあ、そんな人間なのでニトリやイケアが人気がある理由がわからない。
売れる理由はわかるのだが、そんなに年に何度も家具店で買い物をする人が多数いる理由がわからない。

家具店でそんなに年に何度も買う物があることが信じられない。

しかし、そんな「家具音痴」の人間を後目に、ニトリの勢いはすごいと思う。(自分はほとんど利用しないけど)

ニトリ/タカシマヤタイムズスクエア出店で、商業施設の客数が増加
https://ryutsuu.biz/strategy/j031426.html

ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は3月14日、昨年12月に新宿の「タカシマヤタイムズスクエア」南館に出店した「ニトリ新宿タカシマヤタイムズスクエア店」の客数が平日で1万5000人、土日は2万5000人~3万人が来店し、想定を大きく上回っていると発表した。

ニトリのオープン当初は、タカシマヤタイムズスクエア全体の客数が前年同期比で15%増となり、現在でも約12%増の客数で推移しているという。
タカシマヤタイムズスクエアのレストラン街も盛況となり、客数増による相乗効果があったと評価している。



とのことで、ニトリに百貨店が助けられる時代が来るとは、10年前に誰が想像しただろうか。
百貨店マンはこの事実を直視すべきで、少しばかりの新規事業を立ち上げた経営者を「労働強化」を理由に引きずり降ろしている余裕など百貨店という斜陽産業には本来ない。

似鳥会長は、「現在、百貨店から出店してほしいという要望が多数出ているが同じ場所には、出店できないので、交渉をすすめている最中だ」と語る。

という一文があるが、今後、都心百貨店の多くにニトリが出店することになると考えられる。

新宿高島屋タイムズスクエアにはユニクロも入っており、もう百貨店が従来型の品ぞろえやブランドラインナップだけでは集客できなくなっていることは、大丸梅田へのユニクロの出店を見てもわかる通り、公然の事実といえる。

また、百貨店が「小売りの王様」ではなくなって久しいが、ついにドラッグストアにまで売り上げ規模を抜かれてしまった。

ドラッグ店市場規模 百貨店超え 6.4兆円、16年度5.9%増
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15I8C_V10C17A3TI1000/


百貨店売上高が6兆円を下回る状況の一方で、ドラッグストアは6兆4千億円となり、売り上げ規模だけでいえば百貨店を追い越してしまった。
もっとも、これには中国人観光客による爆買い効果も含まれているため、どこまでがドラッグストア本来の実力かというのは、見解の別れるところではある。

百貨店の苦戦の理由は、以前にも書いたと思うが、高級婦人服への過度な特化があると思う。
これは、松岡真宏さんの持論で、

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100507/214292/?P=1

に述べられている。

どうして高級衣料の消費が低迷しているかというと、

1、可処分所得の伸び悩みあるいは低下
2、高級衣料と低額衣料の見た目にほとんど差がなくなったこと

を理由として何度も挙げているが、それ以外に、一般大衆の意識変化があるのではないかと思う。

90年代半ばごろまでは、「ボロ家に住んで50円のパンを食べていても洋服だけに特化して凝る」というオシャレさんが多数いた。
それが2000年代から、「洋服もインテリアもアクセもサプリも雑貨も食事も自動車も全てトータルで垢抜けていること」が、「オシャレ」だという感覚に変化したと見ている。

でなければ、定期的にニトリやイケアに足を運ぶ人が多数現れる理由がわからない。
家具や食器なんてなんでもいい、と筆者のように考えると10年に一度くらいしかそんな店に足を運ばない。

ただし、身の回りすべての物に気を使ってそろえると、各商品が高額品では破産してしまう。
そんなことができるのは本当の金持ちだけだ。

中間層以下がすべての物に気を使ってそろえようとすると、収入や貯蓄の範囲で賄うなら、ある程度の低価格品・お値打ち価格が求められることになる。

感度は最先端でなくても構わないが、そこそこのセンスが必要とされる。

これを「高感度低価格」とまとめれば良いのか、「中感度低価格」とまとめれば良いのか悩むところではあるが、「最高感度高価格」が対象外となることだけは間違いない。

そういう「そこそこの感度でそこそこ安い」という商品が服ならユニクロやジーユーだろうし、家具インテリアならニトリということになる。

収入が伴わないのに、洋服に限らず借金してまで「最高感度高価格」商品を買い集めることが「下品」「分不相応」「愚か」という風に多くの人が判断するようになった。

業界人からすると「感性の退化」ということになるのかもしれないが、甲斐性無しの貧乏人たる筆者からすれば、随分と健全で成熟した考え方だと感じられる。

この風潮が今後一転して「最高感度高価格品」を求めるようになるとは考えられない。

だから衣料品業界としては、これに対してどう取り組むかが課題となる。
やり方は様々あるだろう。

企業規模やブランド規模に応じて、高価格に特化して数少ない顧客に寄り添うというのも正解の一つである。
ただし、大幅な売り上げ増は見込めない。

一方、高感度低価格をさらに進めるというのも正解の一つである。
ただし、こちらはどの分野にしろスケールメリットが求められる。

これまでの意識やこれまでの仕組み・やり方をまるで変えることなく、中途半端なままで、高額商品に取り組んだり、逆に低価格商品に取り組んだりすることがもっとも危険で、何一つ効果が得られない。
それで疲弊しきっているのが、一部を除いた現在のアパレル業界といえる。

もちろん、「中感度中価格」という方針も正解の一つだが、それとても、従来の百貨店向け・専門店向けアパレルの意識のままでは到底消費者には支持されない。
ワールド、オンワード樫山、三陽商会、イトキン、ファイブフォックス、TSIホールディングスをはじめとする百貨店・専門店向けアパレル各社(中小も含めて)の衰退と没落を見ればそれは明らかである。

ニトリに助けられる百貨店の報道を見ながら、つらつらとそんなことを考えた。

ニトリ 成功の5原則
似鳥昭雄
朝日新聞出版
2016-08-19










リストラで広報を全員辞めさせた不振アパレルに驚愕した話

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先日、某カジュアルアパレルの知り合いからこんな話を聞いた。

ちょっとした案件があってそれに協力してもらえるかどうかを尋ねていたのだが、「実は先ごろ、大規模なリストラが行われて広報・プレス担当者が全員辞めてしまったため対応できにくい」という驚愕の事実を伝えられた。

何が驚愕かというと、案件に対応できないことではもちろんない。
このご時世において「リストラによって広報・プレス担当者が全員辞めた(実際は辞めさせた?)」という事態に対して驚愕したのである。

たしかにこのアパレルもその関連アパレルも非常な不振に陥っていると以前から耳にしていた。

退職者が相次いでおり、面識のあった人が何人も退職している。

今回のリストラはそれによるものであることは時系列的な状況から明白ではあるが、それにしても「広報・プレス担当者全員」を辞めさせるというのは正気の沙汰とは思えない。

なぜなら、広報・プレスをおろそかにして売れているブランドは現在、ほとんど存在しないからである。
いわゆる広告宣伝を行わずに業績を国内で伸長させているのはZARAくらいしかない。

逆に、雨後の筍のように毎年誕生する産地ファクトリー系ブランドや、大手アパレルからの独立組による新規アパレル企業は、「どのようにして広報活動を行って知名度を高めるか」ということをかなり熱心に考えているからだ。

このアパレルは本当に21世紀に存在する企業なのかと疑ってしまう。

ZARAほどの世界的規模を持ち、知名度があるブランドならなるほどそれもけっこうだが、そうではないなら、広報活動は必須である。(広告は必要ないかもしれないが)

知られていないのは存在しないのも同然なのだから、不振に陥っているブランドこそ、如何に多くの人に知ってもらうか、注目してもらうかがカギである。
これができないと、残念ながら不振ブランドが業績を回復することはありえない。

繊維・アパレル業界で「物作り系」と分類される人たちの中にはいまだに「良い物を作っていれば必ず売れる・認められる」と頑なに信じている人がいるが、その存在を知られないことには売れもしないし、認められもしない。

なぜなら、多くの人はそういう商品・ブランドがあることすら知らないから。

良い物を作っているならそれをいかに多くの人に知ってもらうかがポイントとなる。

このアパレルは製造加工場と密接な関係があり、「物作り系」に広い意味では属する。
それだけに、「良い物を作っていれば必ず~」というタイプと近しい人が多数いると考えられる。

それにしても恐ろしいばかりの時代錯誤な認識である。

今後どのようにして業績を回復させるつもりなのだろうか。
製造した商品を大手に多数納品することを考えているのだろうか。

そんな大口の取引先なんて現在の国内では数えるほどしかない。
これまでの好調時でもそういう先が開拓できなかったのに、不振に陥っている状態で開拓できる可能性はほとんどゼロに近い。

不振ブランドをわざわざ仕入れたいと思うような小売店は存在しない。

製造加工業に近しい経営者は「広報・宣伝・販促は単なる金食い虫にすぎない」と考える傾向が強い。
たしかに近視眼的に見るなら、広報や販促は金を使うだけの部署であるといえる。

しかし、それによって、商品が売れるようになるのだから、本来はその考えは間違っているのである。
広報・プレス活動は方法を吟味精査する必要はあるが、決して不要な部署ではない。

元々そういう部署がなかった状態を続けるならまだしも、そういう部署があったのに全員をリストラしてしまうというのは21世紀のアパレル企業とは思えない施策だといえる。

残念ながら、今後ますますこのアパレルの知名度は低くなり、結局は消費者に「存在しない物」として扱われるようになってしまうだろう。




戦略思考の広報マネジメント
企業広報戦略研究所
日経BPコンサルティング
2016-10-20




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