南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

「正しいファッション」と「正しいビジネス」はイコールではない

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 ほかのこと(ワールドやら三陽商会のことやら)を書こうかと思っていたが、ちょっと予定を変更して、今日はこのブログをご紹介したい。

アウターからスーツの裾が出ているのを見て思うこと
http://www.apalog.com/fashion_soroban/archive/139

要するに、スーツの上に羽織ったコート(ブルゾンも含む)の丈が短くて、ジャケットの方が丈が長い人を良く見かけるという話である。

ひどい場合は、スーツの上にショート丈のブルゾンを羽織っているサラリーマンも少なくない。
かっこいいかかっこ悪いかというと、かっこ悪い。特にブルゾンはダサい。強烈にダサいと思う。

それについての佐藤正臣さんの考察を見てみよう。


通勤時に見かけるサラリーマンのコート・アウターからスーツの裾がはみ出ていることです。それもここ数年はかなりの確立でこれを見かけます。(ときに50%超えてるのではとも思えます。TVドラマでもよく見かける。)

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しかしながら、ファッション好きの常識からすると、このありえないことも、私なりに違う視点で見てみると、このようなことを考えます。以下箇条書きすると。

・そもそも、そんなこと気にしない。
・通勤用・プライベート用のアウターを使いわけるほどお金がない。
・長いコートはおっさんくさい。ダサい。(昔の刑事スタイル)
・防寒できれば、なんでも良い。

他にも色々ありますが、こんな推測が成り立つのではないでしょうか?

とのことであり、非常に賛同できる。
一つ付け加えるとすると、ロング丈コートは日常生活において「不便」だという点である。
例えば自転車に乗りにくいし、電車で座席に座るときには尻の下に裾を敷くことになって、シワになりやすい。
階段を上る際には、上の段に裾が擦らないかどうかも気を付けないといけない。

ショート丈、ハーフ丈に比べてめんどくさいことが多い。

だからロングコートは敬遠されるのである。

また、お金のあるなしにかかわらず、通勤用とカジュアル用のコートを分けることに興味を持たない人も多い。
コートとはいささか異なるが、息子がまだ保育園に通っていた時分だから、もう15年ほど前である。

ほかの児童の保護者と顔を合わせることも多かったが、その中に、パジャマと会社の制服しか持っていないというお父さんもいた。
たしかに、朝8時とか9時に出勤して、9時ごろに帰宅してあとは寝るだけという生活を続けるなら、カジュアルウェアはほとんど必要ない。
効率的に過ごすなら、肌着とホームウェア代わりのパジャマ類(スエット上下を含む)、それと会社の制服があれば十分だ。通勤は制服を着ればよい。

週1回か2回の休日を過ごすための服をわざわざ買う必要もない。

良い悪いではなく、こう考えるサラリーマン男性がそれなりの人数で存在するのは事実である。
下手をするとそれがサイレントマジョリティではないかとも思う。

そこで佐藤さんは次のようなブランド側への解決策を提案する。

もしも、私がどこかの紳士服のMD・バイヤーなら、上記の推測を基にこんな手を打ちます。

・長いコートは大幅に商品数を減らす。なくす。
・アウター自体の構成比を減らす。スーツ専用のアウターは作らない。
・着丈はあまり気にしない(MA-1ほどの短丈は作らないが)
・単純にサイズは大きくしないが、パターン・アームホールの調整等でスーツの上に着られるようにする。
・女性の意見を聞きまくる。


とのことで、これにも賛同する。

要するにオンオフ兼用のコートを作るということである。
そしてロングコートの品ぞろえを減らすということである。

ビジネスという観点からするとこれはまことに正しい選択だといえる。

しかし、こういう考えに対しては、オシャレを自認する業界人wwwは反発するだろうと予想される。
そんな反発なんぞは何の意味もないから無視するだけだが。

彼らは「正しいオシャレが否定された」と思うのだろう。
別に誤解されたままでも何の痛痒もないが、否定はしていないということを明言しておく。

本来はロングコートがもっとも格調高いし、筆者個人もロングコートが好きである。
正しく着用すれば、かなり細身に高身長に見える。
かっこよく見えやすくなる。
おまけに尻も暖かい。

だからそういう着こなしがあるということは伝え続けるべきだと思うが、ビジネスという観点から見ると、そういう物を好む層は少数派でニッチである。
じゃあ、ロングコートはニッチ向けに作って採算を確保すれば良いことであり、その売上高は1億円とか5億円程度で満足するべきなのである。

オシャレを自認する業界人wwwwの思考が圧倒的に間違っているのは、ニッチ層しか好まない「正しいオシャレ」を大衆向けに売りたいと考えている点である。
ロングコートで言えば、大衆にとってメリットよりデメリットが大きいから大衆はロングコートを敬遠するのである。
それに対しての啓蒙活動は必要だろうが、要らない物は要らないのである。

だったら、マジョリティが必要と感じるような商材を作って提供するのが「正しいビジネスの姿勢」だろう。

もし、何十億円とか何百億円という売上高を作りたければ、マジョリティが必要と感じる商品を発売すべきであり、防寒アウターでいうなら、世のサラリーマンは圧倒的にオンオフ兼用のショート丈・ハーフ丈を求めている。

フランス革命前まで貴族と平民では服装が異なっていた。
大雑把にいうと貴族はキュロットと呼ばれる半ズボンをズボンの上から重ね穿きしていた。
平民はキュロットを穿かずにズボンのみで、サン・キュロット(半ズボンなし)と呼ばれていた。

フランス革命で貴族が没落し、フランスはあまねくサン・キュロットになったのだが、それを指して「サン・キュロットは文化として正しくない。おしゃれではない。キュロットを穿く文化を継承すべきだ」などと批判しても意味がない。今更その当時には戻れないし、物事・文化というのはそういう風にして変化をしていくものだからだ。

サイレントマジョリティがオンオフ兼用のショート丈コートを求めているなら、それを提供するのがビジネスである。

オシャレな業界人wwwwが「正しいファッション」と「正しいビジネス」を混同し続けているから、アパレル業界は混迷しており、不振を極めているのではないか。
己の好みであるロングコートを無理やりに押し付けてもそれは大衆からは支持されない。そういう商品は仲間内のニッチ向けに作って満足しておけば良いのである。












大手の「前年実績脳」に無理にお付き合いする必要なし

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 2月10日、11日と久しぶりに仕事で東京に行った。
多くの人にとって、こんな禿げかけたオッサンの動向なんてそんなに興味もないだろうが、追って詳細は公表させていただく。

また、昨年の10月下旬以来ストップしていた仕事があるのだが、これの再開が決定したので、また3月か4月に東京に行くことになる。

さて、今回の上京のタイミングでも東京では多くの展示会があり、そのご案内もいただいていたのだが、申し訳ないことにすべてを回ることはできなかった。
関西も含めた地方都市と比べると東京は段違いのボリュームがある。

地方なしには東京とて成り立たないことは原則としてはその通りだろうが、アパレルに限らず東京一極集中するのは当然の流れだといつも上京するたびに痛感する。

実際にかつて付き合いのあった地元関西のメーカーやブランドもどんどんと東京へ本社移転したり、展示会を東京のみの開催にしたりしている。

そんな中、アレスという神戸のマフラー、ストールメーカーから久しぶりに展示会の案内をいただいた。

アレスも神戸が本社だが数年前から活動の比重を東京に置くようになっており、神戸にお邪魔するのは本当に3年ぶりくらいのことになる。

事務所には懐かしいカシミヤ山羊人形が置かれていたが、随分と数が減ってしまっている。
かわいいので出入り業者などが「売ってください」というらしく、売っていると、残ったのがこの2匹だけになってしまったらしい。

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新しく作ることはできるが100個とか1000個のロットが必要なので躊躇しているそうだ。
いっそのこと、大量生産してこの人形も販売してみてはどうかと思ったが、どんなものだろうか。

今回、神戸に先駆けて行った東京展示会で好評だったのが梳毛カシミヤの大判ストールだった。

通常の大判ストールは60センチ×200センチくらいだが、これは140センチ×200センチあり、通常の二倍以上の幅がある。

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(生地のアップ)



アレスからするとこの商品発売は大きな賭けだったそうだが、ウール・獣毛の門外漢である筆者には実はその悲壮さは理解できなかった。(笑)説明を聞いてやっと理解した次第だ。

ウール・獣毛を得意とする方には当たり前のことだが、梳毛と紡毛がある。
ウール・獣毛の繊維長の長さをそろえるというのが梳毛で、そろえないのが紡毛である。
一手間加えるので、当然、梳毛の方が高い。
普通のウールでさえ、梳毛にすると原材料費が高くなるのであまり使われなくなる傾向にあるが、そもそも高額なカシミヤで梳毛にするとさらに割高になる。

このため、梳毛カシミヤはよほどの高級ブランドでないと使用されなくなっている。

また幅を2倍以上にするということはそれだけ原料の使用量が増え、原材料費が高くなる。

梳毛+2倍以上の幅ということで、通常のカシミヤストールよりも原材料費が高くなってしまい、果たしてそんな高額な物が売れるのかという心配があったとのことで、そういうふうに説明されると「なるほど」と納得できる。

卸値は1万円だそうだ。

店頭販売価格は企業ごとの設定にお任せだが、2万5000~3万5000円くらいになる。
内モンゴル自治区製だ。

もちろん、カシミヤには等級もあるから、一概にはいえない。
最上級の梳毛カシミヤだともっと高額になるだろう。

現在、ストールブームは一段落している。
マフラーと同様に冬は必需品といえるが、春秋シーズンにおいては不可欠な商品ではない。
以前だとファッションとしての人気が高かったため、春秋でも薄手ストールを巻いた人を多く見かけたが、一昨年くらいからその割合は減った印象がある。

原価が高くなるうえに需要が一段落した商品だから、製造側とすると「大きな賭け」という気になるのも無理はない。

そんなおっかなびっくりで展示したところ、意外にも好評だったという。

とくに地方の好調な専門店やネットショップからの受注が好調で、知名度の高い大手卸売りアパレル各社からは予想通りあまり受注に結び付かなかったようだ。

そういう話を聞くと、なんだかかつての大手アパレルは完全に顧客を見失っていて、それらの企業をさまざまな指標の目安としているメディアも判断基準を誤りつつあると感じる。

大手アパレルのように国内で何百億円規模のビジネスを追求するなら、トレンドから外れた高額商品というのは「売れない」ということになるが、そういう物が欲しいと思っている人はゼロではない。

そういう要望を集めればもしかすると5億円とか10億円くらいの売上高にはなるかもしれない。

それを丹念に拾い集めているのが、逆風下でもある程度の好調を維持できている本当に「売る力」のある地方専門店だろうし、中小規模のネットショップといえるのではないか。

すべてを「前年実績」を基本に考える大手アパレル・大手流通(GMS、百貨店)のやり方は、物が溢れている今の時代には、適合しなくなっている。

また後日、詳しく書いてみるが、以前、ステテコがブームになったことがある。
そうすると猫も杓子もユニクロもステテコを発売する。
複数年に渡って売っていれば、当然どこかで飽和状態になり、売れ行きが鈍る。

しかし、大手肌着アパレルもGMSも百貨店もおバカさんなので、「ステテコ」という項目で前年実績があるため、その項目をいきなり激減させることはできない。

だから、本来、春夏用の商品だったステテコなのに、秋冬向けの保温ステテコなんていう珍妙な物が作られ販売されることになった。春夏のステテコの減りを秋冬でカバーするためだ。まことにバカげた動機である。

冷静に考えてほしいのだが、いわゆる股引、パッチとよばれるズボン下防寒着がすでに昔からあるのに、そんな珍妙な保温ステテコなんて商品を誰が必要と思うだろうか。

結果、珍妙なる保温ステテコは2シーズンくらいで姿を消した。
当然である。

これが業界に跳梁跋扈する「アホな前年実績脳」である。

そうして衣料品業界は活力を失ってきて現在の状況に陥っている。

それはさておき。

そういう「アホな前年実績脳」になっていない中小型専門店やネットショップが存在し、そこでは大手が「売りにくい」と思い込んでいる商品を売りこなせている。そういう先と如何に取り組むか、如何にクローズアップして伝えるかが、今後のこの業界が存続できるかどうかという指標になるのではないかと思う。

何はともあれ、アレスの今回の挑戦はそれなりに評価されたようで良かったのではないか。

サンプルの貸し出しも行っているアレスの受注サイトのアドレスを貼り付けておくので、興味がある方はどうぞ。

http://www.alles-inc.com/wcf/











若者がファッション業界を志望しなくなるのは当たり前

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 「若者のファッションに関する知識が浅い」という類の老害の嘆きは百害あって一利なしではないかと思う。

老害感丸出しのこんな事例が繊研プラスのコラムに先日掲載されていた。

http://www.senken.co.jp/column/eye/assistant0125/

あるプレスルームがアシスタントのアルバイトを募集したところ、20人を超える応募があったという。人手不足のおり、うらやましいと思いきや、結局採用は見送ったそうだ。「どの子もそれっぽい格好はしてるけど、ベースとなるファッションの知識がなさ過ぎて」とのこと。

 面接での情報を総合すると、皆、服を買っているのはファストファッション。東京ブランドなどは、人気どころを一つ二つ知っていたらいい方で、海外ブランドは関心も無い。情報は、タレントなどのインスタグラムや、昨今物議を醸したまとめサイトなどから得ており、雑誌は読まない。なので「はやりものは分かるけど、感覚的で、すごく浅い。これから10年も経ったら、ブランドビジネスはどうなるのかと不安になった」と。

感想は一言「アホか」である。
繊研プラスがということではなく、このプレスルームがである。

何年もこのプレスルームでアルバイトをしていた若者に対して、こういうならまだしも、これからアルバイトをする人に対してどれほどの技能を要求しているのか?
ここまでの技能や知識を要求しているのだから、さぞかし良いギャラを払うのだろうと思う。

これで時給1000円以下とかだったら、笑えてくる。

いくつかのプレスルーム、プレス業者と付き合ってきた経験上から言えば、プレス業者の知識もあまり大したことがない場合が多い。

たしかにブランド名はよく知っている。それこそコレクション系と一部セレクト系で扱われているブランドに限られているが。
しかし、生地、売り場、流通のことはまるで知らない。
だから彼らが作ったプレスリリースはまったく要領を得ないポエムのようなものが多い。

あれを読んで理解できる人間は同じくポエトリーな人間に限られるだろう。

記事中のファッション雑誌とは何を指しているのかわからないが、ファッション雑誌の多くはかなり間違った知識で書かれている。

そもそもファッション雑誌の記事を書いている人は、織物と編み物の区別も出来ていない人もいる。(全員がそうだとは言わないが)

大まかにいえば、ジーンズやワイシャツ、チノパン、ネルシャツ、ダウンジャケットなどで使われている生地は「織物」である。
Tシャツ、ポロシャツ、セーター、トレーナー(スエットシャツ)などで使われている生地は「編み物」である。

にもかかわらず、「〇〇産地で織り上げたスエット生地」みたいな文章が掲載されていることも珍しくない。正しくは「編み上げた」と書くべきだろう。

その程度のファッション雑誌を読んで一体何の知識が身に付くと思っているのか。

その程度の物をありがたがるプレス業者がこれまで跳梁跋扈してきて、ファッションビジネスをこんな体たらくに追い込んでしまったのではないか。
プレス業者には感覚的ですごく浅い人も多い。そのコメントはまさしく自己紹介だとしか思えない。

こんな勘違いをした輩が幅を利かせていることも、ファッション業界に若い人が入ってこなくなった一因ではないのか。
「感覚的ですごく浅い」業怪人たちがカッコを付けられた時代は2005年ごろまでで終わっている。

不要になった事物や業界が衰退し、消滅するのは当たり前のことで、ファッション業界が衰退しているのは若者のせいではなく、その手の輩が大衆に支持されなくなったからだろう。
このプレスルームの言いぐさが当然だと業怪人連中が思っているのなら、早晩、旧来のファッション産業は消滅してしまうだろう。まあ、それは市場で不要になったということだからさっさと消滅すれば良いと思うが。

最近、つくづくと思うのだが、ファッション産業は先駆けて衰退したさまざまな他産業と同じような足跡をたどっていると思う。
ファッション業界は、頑迷固陋で性質の悪い伝統産業のようになりつつあると個人的に感じている




西友の崩壊―現場からの報告書
荻原 康昭
データハウス
2000-10





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