南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

「服」以外への金の使い道が増えたから売れなくなっただけのこと

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 ダイヤモンドオンラインのこの記事はなかなか的確な指摘ではないかと思う。

「百貨店とスーパー」の数字で語られる消費統計と報道の歪み
http://diamond.jp/articles/-/128461

マスコミ各社はだいたいが百貨店の売上高とスーパーの売上高で景気や消費動向を報道するが、それは実態に合っていないのではないかという指摘の記事である。

百貨店の売上高は30年前の水準である5兆円台にまで落ち込んでしまった。
理由は様々あるだろうが、店舗数の減少もその一因であるといえ、地方百貨店の閉店や倒産が響いている。

それ以前に消費市場全体に占める百貨店の割合も縮小している今、景気指標の一つとして統計採用の意味が希薄化しているのである。

もう一つの重要指標であるスーパー。こちらも16年度(15年4月から16年3月まで)の売上高は前年比1.6%減の13兆426万円だった。こちらも97年の16兆8635億円をピークにすでに3兆円以上、減り続ける市場である。


世間では百貨店売上高の減少ばかりに注目が集まっているが、スーパーの売上高も順調に減っているのであり、今後も順調に減り続けるのではないかと思う。逆にスーパーの売上高が増える要因を思いつかない。

にも拘わらず、

しかし、毎月、日本百貨店協会によって発表される百貨店の売上高をマスコミも重宝しているのが現状である。キチンと統計数字をレク付きで発表してくれるのは日本百貨店協会とスーパーの業界団体である日本チェーンストア協会しかなく、マスコミ各社もこの数字で消費動向の報道をするしかないのが現状である。

という状態であり、これはかつて業界紙に属したわが身を振り返ってもまったくその通りだとしか言いようがない。

で、この記事は、例えば15兆円以上にまで成長したネット通販や6兆円を越えるようになったドラッグストア、さらに7兆円規模の家電量販店が反映されていないと指摘しており、これもまったくその通りだといえる。

しかしながら、ようやく最近はコンビニエンスストアの売り上げも集計するようになっているが、依然として各地の経済産業局の管内の経済動向や、各地区の財務局による経済情勢分析でも地元の百貨店やスーパーの動向しか見ていない。

ここで改めて、衣料品不振や百貨店不振の原因が可視化されたように感じる。

要するに個人の金の使い道が増えたのである。

2000年代まではネット通販もなかったし、酒、車、服くらいしか金の使い道がなかった。
そのときに比べると個人の趣味のバリエーションは格段に増えている。

ジョギングをする人もいるだろうし、ロードバイクをする人もいる。
釣りもいるだろうし、携帯電話やパソコンに金をかける人もいる。
ガンプラを買う人もいるし、ゲームに金を使う人もいる。
何が面白いのかわからないがソシャゲに課金する人もいる。
女性ではないからあまり詳しくないが、コスメや化粧品だってバリエーションが増えている。
あからさまに化粧をする男性は少ないが、美容液などを常用する人は以前よりは増えている。

となると、洋服に使える金額は減らざるを得ない。

そこにバブル崩壊からのデフレが始まり衣料品の平均価格も低下した。

日本のアパレル小売り市場は10兆円を割り込んでおり、91年は15兆円以上あったのだから実に4割減となっている。
洋服自体の売れる枚数が減った部分もあるだろうが、平均価格が大きく下落したことも響いている。

一方で、20億点だった衣料品の国内流通点数は39億点にまで増えている。
これも低価格ブランドの大量生産・大量販売によるものである。

市場規模は4割減になったが、流通する商品量は倍増しているということになり、減少したパイを各ブランドで分け合っているというのが正しい現状といえる。
また、それを分け合うブランド数もこの20年間の間に増えているのではないかと思う。

ブランド数についての統計は存在しないが、零細規模のブランドを含めるとそれこそ無数にある。
OEM/ODM業者の急増によって、金さえ払えばだれでも洋服ブランドが立ち上げられるようになっている。(長続きできるかどうかは別として)

結局、洋服も含めた全ジャンルがそろって需要が増加することはなく、何かが増えればその分、ほかの何かへの支出が削られるのであり、洋服は削られる側であるといえる。

さらに洋服分野だけでも同じことがいえる。どこかのブランドの売上高が増えるということは、他のブランドの売上高が減るということである。とくに20年間、所得が増えていない状況が続いているからその傾向は顕著にならざるを得ない。全ブランドがそろって売上高を伸ばすということはありえない。

考えてみてもらいたいが、毎月5万円の可処分所得があったとして、何もなければ5万円分の洋服を買っているところに、今月20,000円でパーフェクトグレードユニコーンガンダムのプラモを買ったとすると、3万円分しか洋服は買わなくなる。手取りは急には増えないからどこかの支出を減らさざるを得ない。

また、有名ブランドで5万円の服を買ってしまったとしたら、次の給料日までは他のブランドで服は一切買わずに乗り切る。

国内市場規模というのはそういう個人の集合体だから、個人の消費の動向とある部分では似るのが当然といえる。

となると、服が売れないのは日本の市場規模が小さいからでもなく、日本の消費者がアホだからでもなく、日本の消費者がファッションに興味を持たなくなったからでもない。まあ、ジジイ世代の考える「ファッション」には興味は持たなくなっているが。

洋服が売れるようになるには、全体の所得を増やすしかないし、各ブランドは売れたければ39億点に埋没しないような売り方・見せ方・伝え方をするほかない。

その事実が直視できないなら、売れないままに市場から退場するほかない。



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「グッドチョイス・グッドコピー」しか考えられないブランドは無能

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 先日、某OEM企業の人とお会いした。
その人の悩みとは、ポストMA-1ブルゾンが思いつかないということだった。

たしかにMA-1ブルゾンは劇的な復活を遂げた。
復活し始めたのはかれこれ4~5年くらい前となり、この3年間は売れ筋ブルゾンの定番化していた。

90年前後に大ヒットし、当時の男子大学生はほとんど着用していた。
ときどき、大学生のファッションは量産化しているという記事を見かけるが、そんなものは90年ごろも同じだ。
MA-1ブルゾンとリーバイス501というのは当時の量産型大学生のユニフォームだった。

ただ、MA-1ブルゾンの色は様々あった。
オリーブグリーン、シルバーグレー、黒、ネイビー、ワインなどだ。
それぞれの好みに合わせてチョイスしていたが、まあだいたい人気の色は重なる。

それが広まりすぎて現場作業員までが着用するようになり、さらにはタイトシルエットが標準となったことから、身幅もアームホールも広いMA-1ブルゾンはファッションアイテムではなくなった。

昨年秋から今春にかけて猫も杓子もMA-1ブルゾンを着用している。
価格もピンキリで、ユニクロは3990円で販売していて、今春用の薄手MA-1ブルゾンは1990円に値下がりしている。
ジーユーも発売していたが、生地や縫製仕様のクオリティでは格段の差があり、1990円ならユニクロのMA-1ブルゾンを買うことをお薦めする。

IMG_2225

(今年初めに1990円で買ったユニクロの中綿入りMA-1ブルゾン)




さて、ユニクロやジーユーで最終処分価格1990円で投げ売られるようになるとMA-1ブルゾンのトレンドはお終いである。

製造業者もブランド側も次なる飯のタネを探さなくてはならない。

ただし、今秋もまたMA-1はいろいろなブランドから発売されるだろうし、着用者もそれなりに現れるだろう。
大衆に行き渡って、鮮度はなくなるが、だからといって一瞬で消えるわけでもない。

この後何年間かは店頭でも見かけるだろうし、着用者もそれなりに見かけるだろう。
トレンド変化というのはそういうもので、逆に一瞬で消え去る商品の方が珍しい。

近年だと身頃の中ほどで色が切り替えられているバイカラーのジャケットやコートがそれにあたるだろう。
ニットは昨年秋も見かけたがさすがにジャケットやコートは最早店頭では売っていないし、着用者も数少ない。
トッキュウジャーのトッキュウ2号(ブルー)がいつも劇中で着用していたのに。

MA-1ブルゾンが定番アイテムとしてこのまま定着するのか、それとも5年後くらいに再び消え去っているのかはわからない。神のみぞ知るである。

さて、OEM/ODM業者に次のヒット商品を提案しろというのもなかなか酷な話だと感じる。

というのは、いくら腕の良いOEM/ODM業者といえども、販促を仕掛けるのはブランド側の役目である。
例えばミナミ企画(仮名)というOEM業者がいたとして、OEM業者の名前を出して販促を仕掛けたところで一般消費者からすれば「何それ?」である。

先日、繊維専門商社のヤギの決算発表に出席したが、ヤギには大きく分けて3つの商材がある。

1、繊維原料分野 2、テキスタイル分野 3、繊維二次製品分野

である。

要するに原料から製品製造まで手掛けているということになり、売上高はそれぞれ182億円、141億円、757億円となっている。

繊維二次製品分野は757億円もあり、ODM生産の受注を進めたことで微増収となっている。

売上高757億円といえばかなりの企業規模だが、じゃあ、ヤギの名前で販促プロモーションを行ったところで消費者からすると「何?その企業?」ということなる。

OEM/ODM業者はいくら企業規模が大きく成っても消費者からの知名度は低い。
だから彼らが販促プロモーションをやったところで消費者には響かない。販促プロモーションはあくまでもブランド側の仕事なのである。

そして、現在の国内市場において、「物」だけで売れることはほとんどない。

「MA-1ブルゾンがダメになったから、じゃあ代わりにダッフルコートを並べましょう」

なんてイージーな提案で消費者が買ってくれるはずもない。
それは2000年ごろまでの古いアパレルの売り方である。

今は何かのプロモーションと組み合わせないと売れない。

となると、プロモーションも抜きで「次なるヒットアイテムの提案」をOEM/ODM業者に求めるブランド側が無能だということになる。
ブランド側が「こういうプロモーションを仕掛けるからそれと相乗効果のありそうなアイテムを提案してほしい」というのが本筋である。

それができないなら最早ブランドなんて必要なくなる。

これほど衣料品不振が叫ばれ、それが身に染みているはずなのに、いまだに旧時代の「グッドチョイス・グッドコピー」のやり方を製造側に求めるブランドが多いということは、本当にアパレル業界は化石が集まっているとしか思えない。
そりゃ衣料品の売れ行きも悪くなるはずだわ。


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ニッチ向けの商品を企画製造しながら売り上げ規模の拡大を望むのはナンセンス

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 世の中にはありとあらゆるテイストと価格帯の商品が溢れている。
その中にはどんなにがんばったって多くの人には受け入れられにくいテイストやら価格帯の商品がある。

そういう場合は、事業規模の拡大には限界があり、事業規模の拡大を容易にしたいならテイストや価格帯をマスに向けた設定にすべきであることは言うまでもない。

とくに洋服はそれを身に付けて歩き回るわけだから、奇抜なデザインではマスには売れにくい。
もちろん、何万円もするようなバカ高い洋服も売れにくい。

事業規模を拡大することを目指すなら、買いやすい価格帯で、ある程度万人受けするデザインにすべきである。

しかし、このバランスを理解せずに、「こんなに独創的な服が売れないのはおかしい」などと寝言にも等しいことを平然と主張するクリエイター気取りのブランドもあり、それは衣料品業界のレベルの低さを象徴しているといえる。

ウェブメディアのインディペンドに1日3組の接客販売(例外はもちろんある)しかしない「ガレージエデン」を寄稿した。

一日3組の予約制のショップ。渋谷区恵比寿の「ガレージエデン」
https://independ.tokyo/?p=3154



IMG_2430




個人的にこのショップを運営する浦野貴弘さんに好感を持つのは、端から事業規模を拡大しようと考えていないところである。
自らの好みと商品がマイナーであることを理解して、それに徹している。

この売り方に対して「一見さんお断わりみたいなのはいかがなものか」という意見もあり、それはその通りだと思うが、反対にそういう店があっても良いのではないかとも思う。

どこぞの大手みたいな「すべてはお客様のために」なんてキャッチフレーズばかりの店では気色悪くて仕方がない。

商品は、とにかく「細さ」を追求している。
パンツの形はブーツカットが基本で、トレンドは関係ない。

浦野さんは高校時代までリーバイスのXLサイズでもパツパツになってしまうほどの巨漢だったそうで、だからこそ今は細身であり続けることに強いこだわりを持つ。

自分もさすがにそこまで巨漢ではないが、もともとガッシリした体型なので、その憧れは理解できる。

デザイン自体はベーシックだが、とにかく細さへのこだわりは強いから、到底マス層には売れない。
もちろん値段もバカ高くはないが、そこそこに高い。

ここで浦野さんが「ぼくはマス層に売りたいんですよ」なんてことを言ったら、「寝言は寝て言いましょう」と返すところだが、そうではないからその商品構成には共感できる。

日本に限らず、欧米を見ても、売り上げ規模の大きいブランドの多くは、価格がそこそこ買いやすくて商品デザインが奇抜すぎない。別に日本人だけが特殊な考え方をしているわけではない。

自由経済だから、どんな商品を作ってどんな価格設定にしても構わない。
ポッピーピポパポの衣装みたいなデザインにして10万円の価格設定にしても構わない。

ただし、それが売れないのもまた自由経済である。

クリエイター気取りのブランドは何故、それが理解できないのか。
ビジネス的に成功しているデザイナーズブランドにしても実際に売れているのは奇抜過ぎないデザインの商品がほとんどである。

売れたければ売れやすいデザインや価格設定にすべきだし、自己の主観丸出しの「作品」を作りたければ売れないことを覚悟する必要がある。

主観丸出しで奇抜なデザインをするけれども、売れたいという美味しいところ取りは不可能である。

自分が「ガレージエデン」を支持する理由は、売り上げ規模が拡大できなくても良い、売り上げ規模は拡大できない、と覚悟しているからだ。


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